2016年3月18日金曜日

門外漢によるリョナについての試論(後編)

前回のエントリーでは、
リョナに関しての大雑把な位置付けをする前に、異常性癖についての基盤を示すことで終わっていました。
今回は「リョナ」における固有性を抽出していきたいと思います。

(書いている自分でもエグいなという表現がどうしてもあるので
恐怖心や拒絶感がありそうでしたら読まないほうがいいです)

■っていうか僕は何をもとにして話しているのか

リョナは門外漢と言いながら講釈を垂れるからには
どのようなサンプルを見た上で言っているのか?
そのことを明示するべきでしょう。

どれも、はっきり言って
高校生以下には見せるべきではないくらいにはエグいので
あえて飛ばなくていいと思います。

「荒ぶる座敷わらし」作:金栗
http://kinkuri.html.xdomain.jp/index.html
いわゆるweb漫画にありがちなクソ漫画でございます。
エログロナンセンスを突き詰めてほとんどギャグになってます。
しかしそういったエクスキューズがあってもなおエグい。

「すいつけ!モスたん」作:tk(つくすん別名義)
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=6541
普通の漫画もしっかり書ける作者ですが、
彼のリョナに対するセンスは相当に洗練されています。
この作品は蚊を擬人化したうえですり潰すという良心の介在する余地のない状況を作るところも含めて容赦がありません。

■陵辱とはどう違う

あらためてこういった作品を見ると陵辱という言葉がかなり
近縁関係にあることに気づきます。
もっとも陵辱は単体で性的なカテゴリーを意味しないので
最初から性的なものとして成立しているリョナと別個であるとは言えます。

それならリョナは陵辱の1カテゴリーなのでしょうか。
陵辱がリョナを包含しているのか、
ということに関しては疑義があります。

陵辱にあって犠牲者は狙われます。
ここには必ず襲う側がいます。
先ほど挙げた作品のモスたんでは、しかしそうしようとして
犠牲者を痛めつけているのではありません。
まったく関係性を持とうとすることなく、
哀れモスたんは潰され、毒ガスで燻され駆除されます。

こういった断絶はリョナにおいての特性と言えます。
潰すー潰されるという関係性は必ずしも必要ないのです。
ここにあるのは「    ー潰される」という破壊された1組の概念です。

この不均衡はいかにもファンタジックです。
あたかも、読者とコンテンツの関係のように。

■服従なしの支配

支配の構図を視線の流れとして把握することがありますが、
リョナにおいては見返される視線は必要ありません。

「レイプ目」という術語があります。
これはレイプをされた後の目は
無気力かつ絶望をたたえたうつろな目であろうという
幻想が普及した結果産まれた術語であり、表現です。

このアイコンは明らかに関係の断絶の表象です。
襲う側からの一方的な監視。
見返される逆襲されるおそれのないもの。

このようにしてとらえると欠損をことさらに
取り扱おうとするのも、同じように
こちらへのアクセスを防ぐ象徴の働きをしているのが見えます。

拘束、陵辱においてはSMにも同じような表現がありえますが
SMは常に主従関係をベースとするので、
アクセスそのものを封じることはありません。
最終的に喜んで従属することを表現するために隷属者は
積極的でなければなりません。

リョナにはそのような配慮は無用なのです。
服従なしの支配がここにはあります。

■ファンタジックな臆病さ

こういった不均衡な関係性は
ごく単純にポルノグラフィと享受者の関係にあたります。

この関係性そのものに享楽を発見したことがおそらく
このリョナというジャンルを発展させる原動力になったはずです。

ここに描かれる過剰な暴力は、
ほとんどジョークに近いシニカルさも持っています。
これは出自が自己言及性を持つことの反映でもあります。

あまりに過剰なために、常に不謹慎である
リョナはポルノの中のポルノとして今後も脈々と続いていくでしょう。

最後までご静聴ありがとうございました。

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